いつも楽しく笑っていた。
患者さんが他界するのは、長く勤務していれば必ず遭遇すること。
でもやっぱり慣れないな。
楽しかった思い出が、たくさん蘇る。
内科の先生に紹介されていらっしゃったときの印象は
気難しいのかな?だった。
口腔内が乾燥していて、デンチャーを装着されていたけれど
痛みや噛みにくさがあったから、自分なりに様々なことを調べて
行動されていた。
そう、行動的だった。
コロナ禍の中、京都に行かれた。
弱々しかった体が、京都に行くと決めた途端元気になっていった。
「すごく楽しかった。行ってよかった。」とイキイキした顔で土産話を聞かせてくれた。
美しい人だった。フランス人みたいなオシャレをして
良いものを長く愛する感じが素敵だった。
年齢を重ねていても可愛い女の子だった。
大好きな主治医の2人の先生の話をするとき、キャッキャと女子だった。
2人でときめいた話をするのもすごく楽しかった。
もともと京都に住まれていて、
十五夜の時には、お兄さんのお店のお和菓子が送ってきたからと
美しい羊羹をプレゼントしてくれた。
すごく可愛いうさぎと満月が施してある、上品な羊羹に心が弾んだ。
「これからは、好きなことをやって生きるの!」とキラキラした笑顔を私に向けて言ってくれた。
すごく好きだった。
楽しかった。
あの時間が愛おしい。
もっともっと話したかった。
今まで生きてきて感じたこと、楽しかったこと、笑ったこと、
もっともっと笑顔を見たかった。
歯科衛生という仕事は、患者さんの人生に寄り添う仕事。
まだ出会って2年足らず…全然、寄り添えていない。
もし、次があるなら、どんな会話を私たちはしただろう。
「私、努力しているのよ。好きな人とはつながっていたいじゃない。自分がその人にできることをしたいのよ。」
一緒に写った写真は思い出。
「頑張っているのね」と微笑んでくれた言葉は宝物。
寂しいな。寂しくなるな。
もう、待合室で静かに本を読む姿に出会えないなんて。
そうだよね。人はいつか他界する。それがいつかわかっていたら、後悔をせずに済む。
後悔せずに済むように、出会った患者さんには、自分の誠心誠意で接したいと心から想う。
あ〜。まだ信じられないから。ありがとうございましたってお別れの言葉は言えない。
「今日も楽しい時間をありがとうございました!
また、次回お会いできる日を楽しみにしてます。」
「私もね」